コロナ禍で旅行に行けない日々が続いていますね。人生における旅って結構重要なことだと個人的には思います。そこで旅の気分を味わいたいときに筆者は旅行記を読みます。
今回は多くのバックパッカーのバイブル、沢木耕太郎の『深夜特急』を紹介していきます。
沢木耕太郎のプロフィール
1947年、東京生れ。横浜国大卒業。ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。『若き実力者たち』『敗れざる者たち』等を発表した後、1979年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、1985年に『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞を受賞。1986年から刊行が始まった『深夜特急』三部作では、1993年、JTB紀行文学賞を受賞した。ノンフィクションの新たな可能性を追求し続け、1995年、檀一雄未亡人の一人称話法に徹した『檀』を発表、2000年には初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行している。2006年に『凍』で講談社ノンフィクション賞を、2014年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞。近年は長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』を刊行。ノンフィクション分野の仕事の集大成として「沢木耕太郎ノンフィクション」が刊行されている。
沢木耕太郎 | 著者プロフィール | 新潮社 (shinchosha.co.jp)
たぶん名前だけはなんとなく聞いたことある人が多いのではないでしょうか?
次のページからあらすじと、筆者なりに学んだことを書いていきます!!
あらすじ
沢木耕太郎がインドからイギリスのロンドンまで、乗合バスで行くお話です。
そう思い立ったのは彼が26歳のときです。仕事を全て投げ出して旅に出ました。
途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔いしれて、思わぬ長居をしてしまいます。
マカオではサイコロ博打に見せられて、あわやこの先の旅が…
1年以上にわたるユーラシア放浪の旅が始まります。いざ、遠路20,000キロ彼方のロンドンへ!
インドからロンドンまで陸路で行くとなると、途方もない時間がかかりますよね。なぜ沢木耕太郎はそれをやろうと思ったのか? 現代に生きる私たちも、考えさせられる部分がある一冊になっています。
この本から学んだこと
旅の目的は究極いらない
深夜特急には旅の本質が描かれていると思います。それは己の好奇心が赴くままに滞在し、食事し、全く興味のなかったところに寄ってみることです。
筆者が海外旅行を始めた当初は事前にその地域の有名な観光地や、美味しいレストランなどを調べていました。確かにその方がとりあえず有名な場所を周れるので効率はいいです。
でも旅に求めるのって本当に効率でいいのかな?って途中から疑い始めました。どうも事前に決めていた場所を観光するだけでは、旅に出ている感じがしなかったのです。
ランドマークや美術館を巡るために計画を立てて、移動して、写真を撮って、また移動して、観光客が集まるレストランで食事をして。
これで楽しくないわけではないんですけど、どこか縛られているような、個人旅行なのに勝手にツアーになってしまっていました。
ある時から事前に行く場所をチェックすることをやめました。もちろん、その場その場で決めるので理想どおりにいくことはありません。でもそのときは自分の興味が赴くままに行動できていると実感することができました。
筆者もまだまだ完全に予定を立てないで旅行することにはためらいがあります。しかし本当に見たいもの、やりたいことは何か?それを考えれば行きたい場所に自然に体が動くのではないでしょうか。
なかったら街をぶらぶらするだけでも良いですね。カフェや公園のベンチに座ってただ時間が過ぎるのを待つのも旅の形だと思います。
筆者としても、今後とも自分の気持ちを尊重した旅を行っていきたいです。
一期一会の出会いを大切にする
深夜特急はバックパッカーの一人旅ですが、決して1人ではありません。
沢木耕太郎はこの深夜特急の旅を通して様々な人と出逢います。宿の同居人、タクシー運転手、駅の係員、食堂のおばちゃん、偶然出会った同志、騙そうとする人。
基本的に旅の道中で出会った人との掛け合いで成り立っています。ささいな仕草や相手の表情から、どんなことを考えているのか想像することで旅をしている気分になります。
筆者も一人旅をすることは多いですが、孤独感を感じたことはありません。ホステルに泊まれば、誰かしらと出会います。
国や言語が目的は違えど問題ありません。例えば、言葉が通じなくても相手の気持ちを推し量ることさえできれば、意思は通じると思います。もし通じなくても、同じ宿に宿泊しているという共通点があれば問題ないです。
これは宿に限った話ではありません。レストランに行けば地元の方と相席することもあります。同じバスに乗り、同じところで降りればなんとなく親近感が湧きます。
筆者のおすすめは夜のパブやバーに行くことです。観光客ではなく、地元の方が集まっているような雰囲気のお店を見極め入ります。
お店によって入店後は冷たい対応をされることもありますが、時間とともにお店の雰囲気に馴染んできます。
お酒もはいり隣の人に話しかけたり、話しかけられたり。不思議なんですけど、この瞬間が1番旅をしている実感がありますね。なんだか地元民になれたような、そんな気分です。出会った人と前から友人だったような気がしてきます。
いつも帰るときには別れを惜しむわけでもなく、連絡先を交換するわけでもありません。また明日会うようなテンションで、別れの挨拶を交わします。
恐らくまた会うことはないと分かっているのですが、また会えるのではないかと期待している自分もいます。
いざ旅が終わり帰国すると、どんなに素晴らしい景色や建物よりも、誰かと過ごした同じ時間が頭の中に強く残っています。
この経験から、旅は人との一期一会で出来ていると学びました。旅で思い出になるのは、人とのつながりだと思います!そして人とのつながりが人生を豊かにすると実感します。
なんだか深夜特急を読んでいると、そのときの気持ちを擬似体験することができます。
現実を受け入れる余裕ができる
旅をしていると、キラキラした世界がまず目に入ってくると思います。それは近代的な建物であったり、豊かな大自然であったりするかもしれません。
しかし、光があれば影があるように、一歩観光地から外れると同じ国とは思えない場所もあります。
いわゆる観光客が歩かない道も歩いてみることがありますが、落書きで風紀が乱れ、ゴミが散乱しています。
公園や駅のホームで暮らしている人はもいます。どこの国にもそういった人はいますが、それを気にせずに歩いている人との対比がなんとも言えません。
それを救いたいとか、どうにかしたいという気持ちはありません。全くないわけではありませんが、ただありのままの現実を自分で受け止め進むようにしています。
また、旅で出会う人は善人だけではありません。中には巧妙な手口で騙そうとしてくる人もいます。
例えば路上に絵を置いて踏ませようとしてきたり、言葉が通じないふりをしてお釣りを返さなかったり、いつもより高値で売りつけてきたり、無理矢理ミサンガを結んでお金を請求してきたり。
単純に考えれば、自分にとって迷惑な人であることに違いはありません。しかし、彼らには彼らの生活がありそのような行動をしているかもしれません。
真意が分かることはありませんが、そう思うことで自分を納得させている気がします。
でも旅先で必要以上に警戒し過ぎるのも良くないと思います。新しい世界に入ったり、経験したりするチャンスを失ってしまうことにつながるからです。
これは深夜特急にも全く同じようなことが書かれていました。
生き方を考えさせられる
1つ目は自己責任です。
旅の中では全てが自分の判断で行われます。つまり、行動と結果は自分の責に帰するわけです。
だからこそ、いつもより自分と向き合う時間が増えますし、自分の在り方を見つけたいという想いが強くなります。
2つ目はレールから脱線してみることです。
大学や高校を卒業したら、当たり前のように勤め人としてどこかの会社に就職して、定年まで仕事をして老後を迎える。
ある意味、一般的に固定化された社会だからこそ深夜特急は読む人にとって魅力的になっていると思います。
深夜特急の中でこんな文章があります。
私たちもまたどんな世界にでも自由に入っていくことができ、自由に出ていくことができる。出てこられることが保証されれば、どんなに苦痛に満ちた世界でもあらゆることが面白く感じられるものなのだ。私自身は何者ではないが、何者にでもなれる。それは素晴らしく楽しいことだった。
沢木耕太郎『深夜特急 2 マレー半島・シンガポール』
決定的な局面で、何かを選択しなければならないときは来ます。でも、選択してしまうことで何かが固定されてしまうかもしれません。それは進学だったり、就職だったり、転職だったりするかもしれません。
「迷ったときには逃げても良い」そう思うことで気持ちが軽くなります。レールは方向が変われば、またどこかに続いているはずです。
人生という戻ることができない旅の中で、何も決めないで逃げるという手段もあるのだとこの本から学びました。
まとめ
沢木耕太郎の『深夜特急』は読む人の状況や価値観で捉え方は変わると思います。
筆者は自身の旅の経験や、人生という観点から考えさせられる点がありました。
今読み返したら、また抱く想いは変わっているかもしれません。
そう言った意味で、名著でありながら常に自身の中でアップグレードされていく素晴らしい一冊だと思います。
一人旅に興味がある人もそうでない人も、人生で悩んでいる人も、働く意味を考えている人も読んでおくことをオススメします!
これからも本に関する記事を更新していきます。それではまた次の記事で!
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