『予想通りに不合理』ダン・アリエリー
心理学、ならびに行動経済学を専攻する研究者、ダン・アリエリー教授の著書で、ニューヨーク・タイムズのベストセラーになった一冊です。
この本が行動経済学ブームの火付け役とも言われています。行動経済学の基本を知りたい場合、最初に読むことをおすすめしたい一冊です。
【要約】著者が最も伝えたいこと
タイトルにもなっていますが、
人間は「合理的」ではなく、「不合理」!
ということです。
これだけ言われても何のことか分かりませんよね。こちらの本では日常的な生活の中で直面する問題について、さまざまな実験や検証を紹介しています。
興味深いと思った部分のみ簡単に説明していきます!
人は「相対的」にしか物事を判断できない(1章)
パン焼き機の話(おとり効果)
ある製造会社が家庭用パン焼き機を275ドルで販売しました。ほとんどの消費者は無関心でした。
そこで、ちっとも売れないのに豪を煮やした製造会社はマーケティング調査会社に相談したところ、新モデルのパン焼き機を売り出すことを提案されました。しかも最初のパン焼き機よりも大型で、値段は1.5倍のモデルです。
すると、売り上げが膨らみ始めました。ただし、売れたのは大型のパン焼き機ではありませんでした。
これは消費者が2種類のパン焼き機から選べるようになったからです。一方のほうが見るからに大きく、はるかに高価なため、これまで比べようのないまま判断しなくてすむからです。
お弁当を売りたい場合も考えてみましょう。500円と1000円のお弁当があったときに、あなたは1000円のお弁当をより売りたいとします。
その場合、1500円の弁当を販売することで中間の値段である1000円の弁当がより売れるケースがあります。
特に初めての顧客は、「その店のスタンダード=中位の価格のもの」と認識しやすくなります。また、「安過ぎるのを買うのも…」という心理が働く人もいるでしょう。
恋愛の場合(おとり効果)
交際相手を探すイベントなどで、身体的な特徴がだいたいあなたと同じで(肌の色合い、体つき、目鼻だちが似ていて)、あなたよりも少しだけ魅力的ではない友人を連れて行きます。
このように、おとりとなる人を同席させることで、自分の魅力を引き立て、自分が選ばれるように仕向けるのもおとり効果と言えます。
また、単純に自分より外見が劣っている人を同席させれば、自分が際立つということに留まらず、敢えてかなり外見の素敵な人を用意することで、現実的な魅力のラインで自分が選択されるということもあります。
ただ著者も述べていますがこの秘密を知ってしまうと、連れとして誘われたのか、たんなるおとりとして呼ばれたのか悩むことになります笑
本当に大切な友達の場合、悪意があって意図的にこの方法を利用するのはやめておいたほうが賢明です!
人々は最初に提示された価格に影響されている(2章)
家電量販店の希望小売価格(アンカリング効果)
家電量販店に行くとメーカー希望小売価格を販売価格と並べて表示するといった手法がよく用いられています。
これは希望小売価格をアンカーとして、実際の価格のお得感を演出する方法です。
これだけ安くなっているなら、お得になっているはずだと錯覚してしまい購入してしまいます。
「他店舗より1円でも高い場合は値引します」というように、比較対象として競合店を引き合いに出し、アンカーとする手法も存在します。
このような事例を踏まえて、個人的に家電量販店では値切ることをおすすめします!
「そんなしみったれたことしたくない!」という人もいるかと思います。でもそれでは損をしています。
例えば、家電量販店のケーズデンキは現金値引きを商売文句にしています。つまり値切られることを前提で販売しています。
ただ、何でも値切れる訳ではなく大型家電や高性能電化製品など比較的値段が高めのものにしましょう。特に洗濯機などは提示価格から大きく値引きしてくれる可能性があります。
競合他店の価格を教えることでさらに値引きしてくれることもあります。
こちらの記事で紹介しているヘッドフォンも量販店の提示価格では44000円でしたが、値段交渉の末33000円まで下げることができました笑
海外だと値段交渉する場面は多いです。ホテルやお土産屋、タクシー、食品マーケットなど汎用性が高いです。
日本人は最初に提示された価格を受け入れてしまう傾向があるため、観光地では詐欺まがいのお金を払ってしまうこともありますしね。
商品価格を見極める力をつけるためにも、普段から物の値段について考えてみてもいいかもしれませんね!
タダより怖いものはない!(3章)
人は「無料」という言葉に弱い
取引には良い面と悪い面があります。しかし、何かが「無料」になると、僕たちは悪い面を忘れさり、無料であることにより実際より価値があるものだと思ってしまいます。
経済ではこの力を活用して様々な商売がされています。
例えば、コーヒー1杯無料クーポンであったり、牛丼やサーティワンが無料でもらえるクーポンが配られたりしますよね。
どんなに人が並んでいても無料ならば何としても貰おうとします。30分から1時間かけてようやく手に入れて満足してしまいます。
しかし、別の見方をすれば損をしているともいえます。仮にあなたのアルバイトでの時給が1000円ならば、その時間を労働にあてたほうが特になりますよね。
無料を活用した商売は身の回りに溢れています。何かが無料だと、最善の利益をもたらす決定とは別の決定をくだす場合があるのです。
そのことを知ったうえで、無料の場合は一度立ち止まって考えてみるのがいいですね!
先延ばし癖は性格の問題だけではない(7章)
計画を立てても、計画通りには進まない(現在バイアス)
例えば、夏休みの宿題を初めの方に計画を立てても、計画通りには進まず休みの終わり頃に多くこなすという経験のある人は多いと思います。
大学でのレポートも期限があらかじめ余裕を持って提示されているのにも関わらず、ギリギリになっても取り組まず直前になって焦るという経験もあるあるですよね。
この現在バイアスの傾向が強い人は、本当に必要な事柄を後回しにしてしまいがちです。こうした人は掲げた目標を達成できずに失敗する可能性が高まります。
ここで一つ質問です。
A: 今すぐ1万円もらう
B: 1週間後に1万100円もらう
あなたはどちらを選びますか?
ここでBの選択肢を選べるひとは少数です。多くの人は目先の利益を考えてAを選んでしまいます。
この質問で分かるのは、人間は目の前の欲求にも弱いということです。貯金はあまりせずに浪費し過ぎてしまい人生を棒に振ってしまう可能性もあります。
現在バイアスに打ち勝ち、先延ばしする癖をなくす方法
目標を定める
行動計画を立てるなど具体的に目標を設定しましょう!
ただし、目標を厳しく設定しすぎないようにします。厳しすぎる目標を課してしまうと達成できないイメージがついてしまい、最初から目標達成そのものを諦めてしまう可能性があるからです。
ですので、できるだけ毎日継続できる簡単な目標を立てましょう。例えば、テキストを1日1ページ進めたり、給料の10%は必ず貯金にまわすなどです。
こちらの記事に勉強で目的を持つ大切さについて書いてます!
習慣化できる行動を増やしていく
毎日継続する目標があると、それが苦でなくなってきます。よく言われるのが「習慣化に必要なのは21日説」です。3週間ですね。
この日数を超えると歯を磨くのと同様に、やらない方が何となく気持ち悪くなってきます。
この習慣化できる行動を増やしていくことで、先延ばに対する抑止力になります。
身近にある時間食い虫「スマホ」
今では現代人が多くの時間を費やしているスマホも目先の欲求に飛びついてしまう例です。電車に乗ったとき、カフェにいるとき周りにいる人を見てみると、誰かしらはスマホをいじっています。
本当に必要な用事であったり、仕事のために使っている人もいます。でも、とりあえず取り出してSNSをチェックしたり、なんとなく動画を見たりしますよね。
こちらの記事を読んでいただけると分かりますが、スティーブ・ジョブズやビルゲイツは子どもが14歳になるまで携帯は与えなかったそうです。
ITエリートである彼らはスマホが持つ中毒性について理解していたからです。
また、GoogleやAppleの社員も中毒性について言及しています。
テクノロジーの持つ弊害を考えて、スマホを頻繁にチェックしてしまう誘惑に打ち勝つ方法を私たちは見つけなければなりませんね。
ちょっと内容が脱線してしまいました笑
人はこれから手に入るものより、失うものに注目する(8章)
自分が持っているものに惚れ込んでしまう(所有意識)
例えば、お気に入りの服は着なくなっても売ることができません。服だけに限らず、漫画やゲーム、貰い物などもなかなか捨てられません。
それは何かを得る願望よりも、何かを失う恐怖が上回るからです。
それは一度手にしてしまうと、前の生活に戻ることが困難であることを示しています。
身近な例をあげると、給料が上がり家賃をあげます。すると、もう今の家賃から格下げすることが難しくなります。家賃を下げるのが損失と感じ、心理的な苦痛になるからです。
でも人々はこう思っています。「必要ならいつでも低い生活にもどれる!」と。
もっと身近な例ですとサブスクリプションサービスがあげられます。Amazonプライムや動画配信サービスなどは一度会員になると、なかなか自分の意思で退会できませんよね。
退会したときに自分の損失が大きいのではないかと考えてしまいます。
サブスクリプションサービスはこうした行動経済学に基づいた心理を活用することで利益をあげていると言ってもいいでしょう。
選択の自由は合理的な判断を鈍らせる(9章)
あなたが親だった場合、子どもにたくさんの教育機会を与えてあげたいと考えると思います。
スポーツから音楽、語学まで出来ることなら何でも習わせてあげたいですよね。そうすれば多才になり、将来の選択肢が増えると考えている方もいるのではないでしょうか?
それが良いか悪いかは置いておきます。しかし、この場合一つのことに秀でる機会を放棄しているともいえます。
著者はこう述べています。
わたしたちは、重要かもしれないことのあいだを行ったり来たりしているうちに、ほんとうに重要なことに十分時間を割くことを忘れてしまう。これこそ愚か者のゲームであるのに、わたしたちはこのゲームにひどく熟練しているようだ。
予想どおりに不合理 9章 扉をあけておく
いろいろな方法を試してみるのも良いですが、一つのことに集中してみることも大切ということですね!
「思い込み」は意思決定や様々な効果に大きな影響を及ぼす(10・11章)
雰囲気が高級なら味も高級に感じる(予測の効果)
高級な雰囲気と、高級感のあるお皿、店員さんも清潔感がありマナーがしっかりしているとします。そんなレストランで出された食べ物は何でも美味しく感じてしまいます。これを予測の効果と言います!
つまり、前もって美味しそうだと信じたときは、たいてい、やはり美味しいということになり、不味そうだと思ったときは、やはりまずいということになります。
この予測の効果を逆に活用している例もあります。
昔テレビ番組で「きたなトラン」というコーナーが放送されていましたよね。お店の外観や内装は汚いけれども、料理は絶品という面白い企画でした。
普通なら、清潔感がない汚いお店や厨房→きっと料理も美味しくないはずと思い込みます。でも、これで料理が美味しいのでお客さんも集まりやすくなります。
お客さんが抱いている思い込みなど、料理への期待が低ければ、ある程度の料理でも美味しく感じてしまうのではないでしょうか。もちろん本当に料理が美味しいお店ばかりだと思いますが笑笑
こうした思い込みは、ステレオタイプの形成やプラセボ効果も生じさせます。
まとめ
様々な事例を紹介してきましたがまさに、人間は「合理的」ではなく、「不合理」!ですね。
あなたが普段何気なくやっていることも、行動経済学に基づいていたかもしれませんね。
行動経済学を学ぶことで、いつもの行動をより客観的に判断できるようになると思います。そして考える癖がつきます!
また、人々の行動を分析することで、それよりも先に行動したりヒット商品を生み出せる可能性もあります。
今回の記事では紹介していない事例も『予想どおり不合理』にはたくさんあるので、是非読んでみてください!
どれも身近で実生活に役立つ知識が詰まっています。
それではまた次の記事で!
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